仏教の教えの出発点は、「生きることには、避けられない苦しみが伴う」という気づきです。これを「四苦八苦」と呼び、生・老・病・死という4つの基本的な苦しみに、さらに4つの苦しみ(愛する人と別れる苦しみ、憎い人と会う苦しみなど)を加えた、合計8つの苦しみとして説明されます。
そして仏教では、こうした苦しみの多くは、物事への「執着」(強くとらわれてしまう心)から生まれると考えます。変化するものを変化しないものと思い込んで執着することで、思い通りにならないときに苦しみが生まれる、という考え方です。
「第一の矢」と「第二の矢」
この考え方をわかりやすく伝える逸話に、「二の矢のたとえ」があります。お釈迦様はある時、弟子たちにこう問いかけたと伝えられています。「教えを知らない人も、教えを知る人も、同じように痛みや悲しみを感じる。では、両者は何が違うのか」。答えは、「第一の矢」を受けた後に、「第二の矢」を受けるかどうかだといいます。何かにつまずいて「痛い」と感じる、これが第一の矢です。これは誰にも避けられません。しかし、その後「なぜ自分だけが」「こんなに辛いなんて」と思い悩み、苦しみを増幅させてしまう、これが第二の矢です。仏教が目指すのは、痛みや悲しみそのものをなくすことではなく、自ら追加してしまう「第二の矢」に気づき、受けずに済ませられるようになることだと言えます。

